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1.9気圧酸素カプセルの可能性-当院で導入した1.9気圧酸素カプセルについて

  • 執筆者の写真: WNI事務局
    WNI事務局
  • 2 日前
  • 読了時間: 7分
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前原 博樹

医療法人慈風会厚地脳神経外科病院・あつち葛飾クリニック理事長・東京慈恵会医科大学葛飾医療センター脳神経外科

はじめに


近年、健康管理やパフォーマンス向上を目的とした「高気圧酸素カプセル」の需要が高まっています。特に1.9気圧の酸素カプセルは、医療分野だけでなくスポーツや美容、アンチエイジングなど、幅広い分野で注目されています。


1.9気圧酸素カプセルとは


1.9気圧酸素カプセルは、内部の気圧を通常の大気圧(1気圧)よりも高い1.9気圧に設定し、高濃度の酸素を吸入できる密閉型の装置です。一般的な酸素カプセルの圧力は1.3〜1.5気圧ですが、1.9気圧酸素カプセルは溶解型酸素量も増加するため、理論上、より高い効果が期待できます。


医療用の高気圧酸素療法(HBOT:Hyperbaric Oxygen Therapy)では2.0~2.8気圧で純酸素を吸入することが条件となりますが、1.9気圧酸素カプセルは安全性と効果のバランスが良いため、民間施設でも導入されつつあります。


①作用メカニズム

通常の呼吸では、酸素は赤血球のヘモグロビンと結合して運ばれます。しかし、高気圧環境下では、血漿中に直接溶解する酸素量が増加し、より効率的に全身の組織へ酸素を供給できます(Henryの法則)。これにより、低酸素状態の組織への酸素供給が促進され、細胞修復や代謝活性化が期待されます。


②期待される効果

1.9気圧酸素カプセルには、高気圧酸素療法に近い効果が期待されます。


■疲労回復とスポーツパフォーマンス向上

運動後の筋肉疲労や乳酸蓄積の軽減に効果があるとされています。特にアスリートの間では、試合後の早期回復やコンディショニングに活用されています。


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■筋損傷・関節損傷の早期改善

肉離れなどの筋損傷に対する高気圧酸素療法の有効性は報告されてきましたが、関節可動域制限を伴なう関節損傷においてもその有効性が報告されています(筆者ら2024年日本高気圧学会)。筆者らの経験では足関節靭帯損傷例において1.5気圧以上で関節可動域の改善を認め、2.8気圧まで圧に比例して関節可動域の拡大を認めました(写真1)。また3カ月挙上不能であった肩関節不安定症例において1回の高気圧酸素療法にて関節可動域制限の消失を認めました(写真2)。


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当院では高気圧リハビリテーション(HBO-Reha、写真3)と称し、自由診療にて高気圧カプセル内で理学療法士によるリハビリテーションを行っており、高気圧酸素療法同様に関節損傷の早期回復が認められ高評価を得ています。


■創傷治癒と炎症抑制

高気圧酸素療法は、血管新生を促進し、創傷治癒を早める効果があります。糖尿病性潰瘍や熱傷の治療にも有効です。当院でも創治癒促進や術後の腫脹改善に役立てています。


■骨折の早期回復

高気圧酸素療法ではコラーゲンの増生や血管新生を促進し、類骨や新生骨の形成を促進することが示されており、骨折、骨接合、骨移植、仮骨延長などの動物実験モデルにおいて、X線像、骨密度、骨塩量などの解析から高気圧酸素療法は骨量を増加させること、また骨の破断試験から骨強度を上げること、骨形態計測の結果から骨形成を亢進させることが明らかにされています。当院では骨折早期治癒を望む患者さんには2~3回/週のペースで1.9気圧酸素カプセルを利用していただいております。


■突発性難聴の改善

内耳の循環障害が原因とされる突発性難聴に高気圧酸素療法は有効であり、当院においても1.9気圧酸素カプセルで聴力が改善した例を認めました。


■骨髄炎の改善

細菌に対する直接的な抗菌作用、白血球の殺菌作用の亢進、抗菌薬の作用増強、虚血性軟部組織の創治癒促進などが報告されており、骨髄炎の治療において抗菌薬に加え高気圧酸素療法を併用してきました。軽症例では高気圧酸素などによる保存的治療で感染が鎮静化することもあります。


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当院では抗菌薬の投与が望ましくない授乳中の骨髄炎症例において1.9気圧酸素カプセルを用いて改善に導いた実績や、6カ月前より疼痛持続する左坐骨骨髄炎に対して抗生剤内服と1.9気圧酸素カプセルの併用を約2カ月間行い症状改善し、沖縄県中学生バスケットボール大会で中心選手として優勝、全国大会を決める活躍をすることができた例があります(写真4)。


■脳機能の活性化

脳への酸素供給が増加することで、認知機能の改善や神経保護効果が期待されます。脳卒中後のリハビリテーションにも効果が期待されます。


■美容・アンチエイジング効果

コラーゲン合成促進や活性酸素除去作用により、肌のターンオーバーをサポートします。また、毛根への酸素供給が増えることで、育毛効果も期待されています。


③安全性と注意点

1.9気圧酸素カプセルは比較的安全ですが、以下の点に注意が必要です。


●気圧変化による耳閉感を防ぐため、あくびや唾を飲み込むなどの耳抜き作業が必要。耳抜き作業困難な場合は中耳炎に発展する可能性があります。

●副鼻腔炎などを併発している症例においては頭痛がおこる場合があり医師との相談を要します。

●気胸の既往がある症例や重度の肺気腫症例においては医師の相談が必要と考えます。

●過剰利用のリスク:純酸素を吸入する高気圧酸素療法と異なり酸素中毒のリスクは低く安全と考えますが、適切な治療時間で行うことをお勧めします。当院では60~120分の治療時間としています。


④今後の可能性と研究動向

1.9気圧酸素カプセルは、以下のような新たな応用が期待されています。


●認知症予防:脳の血流改善により、アルツハイマー病の進行抑制が研究されています。

●宇宙医学:無重力環境での筋萎縮や骨密度低下対策としてNASAが研究を進めています。

●精神医学的応用:うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の補助療法としての可能性が示唆されています。

●再生医療との併用:再生医療直後に併用することにより、その効果を増加させることが期待されます。(当院では多血小板血漿や脂肪幹細胞移植、免疫再生医療と併用することにより効果を高める治療を計画しております。)


⑤1.9気圧酸素カプセルのメリット

高気圧酸素療法においては空気加圧で純酸素を吸入させるが、酸素加圧で治療を行うため火災を危惧し、火器持ち込み厳禁です。静電気を発生させないよう化学繊維の衣服は露出できず、場合によっては木綿の病衣に着替える必要があります。またスマートフォンやPCの使用も禁止で、患者さんにはストレスのかかる環境となります。


一方1.9気圧酸素カプセルにおいては、当然火器持ち込み厳禁ですが、電子機器の持ち込みは自由で内部にクーラーやテレビの設置も可能です。高気圧酸素療法においては、超音波診断装置や治療機器の持ち込みは電源やバッテリーを必要とし安全上不可能であるが、1.9気圧酸素カプセルにおいてはカプセル内に電源も設置されており、耐圧性に問題なければ超音波診断装置を用いて検査可能、治療機器も使用可能です。高気圧環境下でのさまざまな臨床研究も可能と考えています。


おわりに


当院では1.9気圧酸素カプセルを用い自由診療として治療をおこなっておりますが、2.0気圧を超える高気圧酸素療法が必要な症例においては、速やかに高気圧酸素療法施設へご紹介する体制を整えております。わが国で保険収載されている疾患においては、科学的なエビデンスも蓄積されており高気圧酸素療法の優位性は明らかで、今後さらに応用範囲が広がる可能性があります。専門的な判断は必要ですが、高気圧酸素療法で有効とされる疾患においては1.9気圧酸素カプセルでもある程度有効と考えることができます。


1.9気圧酸素カプセルは、体内の酸素濃度を高め、疲労回復、創傷治癒、美容効果、スポーツパフォーマンス向上、認知機能向上などの他、可動域制限を伴なう関節損傷例において速やかな改善が認められます。圧による改善も確認されており、さまざまな効果が期待できる装置です。安全性に十分配慮し、専門家の指導のもとで使用することで、その効果を最大限に引き出すことが可能となります。掲載されている写真は、本人の了承を得ております。


引用元:総合医療でがんに克つ 2025 10 vol.208


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